最近の報道などでよく「若者の車離れ」という表現を目にすることが増えた
若者が車を買ってくれないから業績が伸びないということらしい
それに対して「お金が無いから買えない」というネット上の意見ももっともに思える
しかし「お金が無いから買えない」というのは基本的に「欲しいけどお金が無いから買えない」という場合にこそ当てはまると思うのだが ネットの意見をざっと眺めていると むしろ「車に興味が無い」という人が増えているように感じられる
そして都市部で生活する人の場合は「車を所有するメリットよりも負担の方が大きいので無駄である」という合理的な意見も多く それが車の購入にストップをかけている要因のように思える
二輪車(ここではオートバイのこと)の場合はもっと悲惨で 街中で見かける機会が少なくなったと思えるほど減っているし 実際に台数も売れていないようだ
十数年前までは車もバイクも普通に売れていたと思うのに なんでこうなったのかちょっと考えてみた
二輪車の場合は理由を推察しやすい
かつて二輪車は都市部においての便利な移動道具だった
車ほどの駐車スペースを必要としないし ちょっとした買い物や食事程度なら店近くの路上に駐めておいても大丈夫だった
渋滞も車ほど影響を受けないので たいてい予測した時間通りに行動できるというメリットもあった
しかしそれが2006年から始まった駐車監視員制度によって厳しく取り締まられて 気軽に路上に置いておくことができなくなった
実際に駐車監視員制度が始まってすぐの頃 大きめの歩道にたくさん置いてあった二輪車がきれいに無くなったのを覚えている
当時は「やりすぎ」と言われるほど一気に取り締まりが強化されたので それを理由に二輪車を手放したケースも多かったのではないだろうか
二輪車のメリットである「とりあえず気軽に駐めて用事を済ます」ということがやりにくくなったのだから仕方がない
現在でも二輪車の駐車スペースは増えていないようで 駐車のしづらさは四輪車以上になってしまっているようだ
実際に私も二輪車を買おうと思ったことはあったが あまりメリットがないことに気づいてやめたという経験がある
個人的には中型クラスの二輪車にまた乗ってみたい気持ちはあるのだが いかに趣味のものであったとしても 負担が楽しさを大きく上回ってしまうと高いお金を出してまで購入する気にはなれないという典型だろう
そして四輪車の場合
私は約15年ぶりにマイカーを購入したわけだが 車を購入する前に漠然と考えていた「昔よく行ったあのラーメン屋に行ってみよう」とか「あの洋服屋がまだあったら行ってみたい」とかを未だに実行できないでいる
目的の場所に近づくところまではいいのだが 駐車場が用意されていないと駐める場所に迷って通り過ぎてしまうからだ
それ以外にも行ってみたい場所があった場合はまず駐車場がどうなっているかをGoogleマップなどで確認してから向かうようになった
都内や近郊の市街地に目的地を設定したならどこでも似たような状況になるだろう
それほど頻繁に運転しているわけでもない私でもこうなのだから 駐車監視員制度の車社会への影響は少なくないと思う
確かに駐車禁止区域での路上駐車は違法だし それを取り締まるのは必然なのかもしれないが 警察が直にやってる頃ぐらいの取り締まり頻度で良かったんじゃないかと思う
駐車監視員の報酬が時給制とかだったら程よい緩さもあっただろうが どう考えても実績給だろうから 状況を考えて取り締まり対象を見過ごす……なんて出来るわけがない
それにたかだか700円~1000円程度のラーメンを食べるためだけに都内のバカ高い駐車料金を払うのも無駄に思えるので 自然にそういった街道沿いで無料駐車場のないラーメン屋などを避けるようになってしまう
せっかく駅前地域から大きく外れた家賃の安い場所に店を構えて価格を抑えるような商売をしていたとしても 客が来なければ話にならない
昔はラーメン戦争なんて呼ばれた環七や環八にたくさんあったラーメン屋は商売を続けていられるのだろうかと心配になってしまう
車は二輪だろうが四輪だろうが 駐車をしなければ用事を足すことはできないものなので そこに重すぎる負担があったら所有するメリットを簡単に上回ってしまうだろう
そもそも都市部で個人が車を持つということは趣味の部分が大きいので メリットが負担を上回っているか よほどの物好きじゃない限り真っ先に切り捨てられるものだと思う
最近は駐車監視員の取り締まりも件数低下の傾向にあるらしいが これは取り締まりがいくらか緩くなったこと以上に 制度導入直後の手当たり次第というイメージがドライバーに焼き付いているのも原因していると思う
そしてそれは結果的に車を購入してまで持ちたいという気持ちを阻害していると思うのだ
都市部に暮らす人にとってみれば 車を買わない理由なんていくらでも見つけられる
(車両価格が高い 維持費が高い 駐車場が高い 別に無くても困らない……等々)
そして経済的に余裕のある世代が車を買わなくなると適度な価格の中古車も出回らなくなるので 若い世代が買える車も減ってしまうという連鎖
車自体に魅力がなくなっているという意見もあり私もそう思うが 実用的なメリットが感じられない方が切実なのではないだろうか
例えば昔 職場やサークルなどで小旅行をしようと計画した場合
参加者の数人が自分の車を持ち出して 車を持っていない人を乗せる……なんてことがよくあった
ミニバンやSUV 中にはスポーツタイプのクーペなどが集まったりして ちょっとした自慢大会が始まったりする
車に興味の無かった参加者も 乗せられて初めて車の趣味性とかに気づいたりする
こんな風にちょっとずつ車を持つメリットが伝わっていく場面がいろんなところであったと思うのだが 今はある程度の人数が集まるとミニバンをレンタルしてきたりして経費を抑える方法に行くのが普通になってる気がする
車を個人で所有するというのは 通勤で必要とか日常生活に必須とかの場合を除くと 趣味として価値があるかどうかが問われてくると思う
そういうのは経済的な合理性だとか実用性だけで考えたら簡単に否定されてしまうものなので 車自体に魅力があって「どうしても欲しい」という欲求を起こされるのは重要だと思う
しかし それ以上に取り締まりによって縮こまってしまったドライバーの意識を一度解放してあげられるような方策は必要なんじゃ無いだろうか
でも今は本音(利用者の意見とか)を建前(法律)が駆逐するような時代なのでなかなか難しいのかもしれない