車がドライバーを育てる……は昔の話に

つい15年ぐらいまでは車の運転について 向上心が有る人と無い人では運転技術にかなりの差があったと思う
その当時以前のスポーツカーやGTカーはパワーがある分ちょっと扱いが難しくて 車をスムーズに動かせるように慣れていくだけでも自然に運転が上手くなっていったからだ
初心者マークを付けている一年間は本当に運転に慣れる期間で その期間に上手くなろうと努力した人とそうでない人では運転技術にけっこう差ができたものだった

それが今はどうだろう

トルク重視で扱いやすいエンジンを搭載し 性能の良いブレーキに横滑り防止装置
自動ブレーキも装備されていたり車線を外せば警告してくれたり
そのうち自動運転ももっと進化するだろう

ここまで至れり尽くせりの車だと 免許を取って間もなくの人でも普通に運転できてしまうだろう
車メーカーも交通法規関連の人たちもそういうのを目指しているのだろうから 問題は無いのかもしれないのだが……

ただ 人間というのは努力もせずに目的が達成できると その分野については進歩しなくなってしまうものだと思う
だからこの先 安全装備が充実していくのに比例して 初心者の状態からほとんど進歩しないままのドライバーが量産されていくような気がするのだ

車の走る曲がる止まるという基本動作が自動で制御されるようになったら その分だけドライバーの神経が注意力に振り分けられて安全になる?
それは無理だろう
いつでも居眠りできるような状態の精神で注意力が高まるはずがない

そして車の運転が楽になるにつれて楽しむ要素が失われていき 昔のような運転好きという人種は絶滅の危機をむかえるかもしれない
そうなると車は単なる移動手段になってしまって燃費と内装の充実度ばか語られるようになるだろう
……今でも既にそうなってるか

長々と何が言いたいのかと言えば 各メーカーが発売する車種の中に一つぐらいは 普通に動かすだけでもちょっと難しいぐらいのものがあっても良いんじゃないかと思ったのだ
そしてその難しさの代償に 楽しめるパワーと操作性がある昔ながらのスポーツカー

そのうち内燃機関を持つ自動車は乗れなくなってしまうかもしれないので 今のうちに面白いと思える車が出てほしいと切に願う

AP1を買うとしたら

S2000はフルモデルチェンジを行わないまま2009年9月に終息を迎えたが エンジン形式で前期後期に分けられている
2リッターエンジンのAP1型と 2.2リッターエンジンのAP2型だ

AP1とAP2を比較した場合は 外観や内装に大きな違いはないが操作性がかなり違うと言われる
しかし私自身はAP2を運転したことがないし チューニングやリフレッシュのポイントについてもあまり詳しくないので AP2については語ることができない

だがAP1については2015年の9月に購入してからいろいろ調べて詳しくなってしまったので もし興味があって購入を検討している人がいたとしたら ちょっとぐらいは参考になるかな……という程度の情報は提供できると思いメモ的に書いてみる

S2000のAP1型は細かいバージョンアップが頻繁に行われている

一覧にすると

  • AP1-100 (1999年4月-2000年3月)
    S2000の最初期型で最もピーキーな操作性と言われているモデル
    車体も軽く 真のアルティメットと呼ばれる

  • AP1-110(2000年4月-2001年8月)
    最初期型に小変更を行ったモデル
    2000年7月からVGSという可変ステアリングシステムを搭載した「タイプV」が追加された

  • AP1-120(2001年9月-2003年8月)
    最初期型の最終形
    幌のリアスクリーンがガラスになったのはこの型から
    またアンサーバックも付いた
    スタビライザーが柔らかくなっている
    また2002年10月に特別仕様のジオーレが発売されている

  • AP1-130,135,200(2003年10月-2005年9月)
    AP1のエンジン仕様はそのままに 前後のバンパーやライトのデザインが変更された
    また足回りもサブフレームから形式が変更され ピーキーさはだいぶ緩和された
    耐久性も向上している模様
    その変更はそのままAP2でも引き継がれている
    AP1-135までは高根沢工場製でAP1-200以降は鈴鹿工場製

以上がマイナーチェンジの一覧になる

中古市場を見ていると 最近はAP1の出物も減ってきているように思う
同じような走行距離や状態のもので言うと AP1-100〜120の最初期型は安めで AP1-130以降は高めという印象
販売からの年数を考えると妥当だとは思うが AP1-130以降の低走行ものは 同年代の他の車種に比べて割高かもしれない

今AP1の購入を考えるとしたら最初期型(100〜120型)で適当なものを買って 購入後にリフレッシュをするか 130型以降の良物件を買ってそのまま乗るかが選択肢として考えられるだろう
もちろん潤沢に予算があるなら低走行で保管の良かったものを探すのが良いだろうが タマ数が少ないので難しいだろう

それにAP1だといちばん新しい物を狙ったとしても既に11年前の車両なので 走行距離に関係なく多くの部品が劣化していることも考えられる

そこで問題になるのが「完全ノーマル」を狙うのか それなりに手が加えてある物も候補に入れるのかという判断

ノーマルの場合でもチューンドの場合でも 部品交換の記録はちゃんと残っていることが望ましい

完全ノーマルを売りにしている車両でも S2000用の社外部品は有名どころなら高めにさばけるので 車両売却時に中古のノーマル品を調達して戻しているという可能性もある
(ヤフオクあたりをざっと眺めているとそんな事情が透けて見える)

それにS2000のノーマルシートはとても褒められたものじゃ無いので 後々レカロやブリッドあたりに換えたくなると思う
そう考えると中古車では敬遠されがちな車外シートに換えてある車両も 座り心地に問題が無ければ候補にして問題ないだろう
とはいえ 車検を考えるとレカロかブリッドになるだろうが

足回りに関しては ノーマルダンパーが新しめなら問題ないが ヘタっているとけっこう危険な挙動を起こす車なので ノーマルにこだわりすぎると外れを引く可能性もある
ある程度以上の車高調が入っている方がノーマルより乗り心地も操作性も良くなることも多いので 社外品のダンパーが入っているものも候補にして問題ないと思う
定番の有名どころではオーリンズやビルシュタインあたりか
ただし 車高調ダンパーの多くは3〜4万キロでオーバーホールが必要になるものなので 交換やオーバーホールの記録があるものを選びたいところ

エンジンに関しては 油脂類や冷却関係のメンテさえしっかりやっていればけっこう丈夫なので 走行距離はあまり気にしなくていいと思う
もちろんオーバーホールの記録が残っているならそれも良い

ブレーキはノーマルの見た目がプアなので今どきの派手なキャリパーに換えたくなるが 性能的にはノーマルで充分
ローターがヘタっている場合はパッド交換のタイミングで同時にリフレッシュした方がいいだろう

クラッチはディスクだけの交換で済ませてしまうとトラブルや感触悪化の元なので クラッチラインからディスク周り一式の交換でやっているものが理想
ディスクだけの交換なら費用も安いが クラッチ関連一式だとそれなりの金額が必要なので クラッチの感触が悪い車両は避けた方が良いだろう
もちろん 他の要素がほぼ満足できるのにクラッチだけが……という場合は 交換すれば済む話なので ケースバイケースだが

それから 試乗でも分かり難いのがサスペンションブッシュのヘタり
サスペンションブッシュがヘタっていると普通に走っていてもガタピシと音がするし挙動もおかしいのだが S2000は普通にいろんな音が聞こえてくる車なので 慣れてる人じゃないと気づかないだろう
せっかくハンドリングを楽しむ車を買うのに 足回りがちゃんとしてないと楽しみよりも不安の方が大きくなって楽しめない(経験談)ので できれば購入時に交換したかどうかの履歴が確認できると良いだろう

タイヤに関しては 後輪が前輪の半分ぐらいしか保たないので 溝をチェックするのは後輪が中心
減っていると思ったら交換も交渉してみた方が良い
ホイールについてはオフセットに注意
ツライチを狙いすぎてギリギリアウト!というものを装着してある中古車も珍しくない

ボディに関しては ドアを開けたところにある「サイドシルの塗装割れ」をチェック
これが発生していると修理が大変らしい
この実例についてはネットに情報がいろいろあるので「S2000 サイドシル 塗装割れ」あたりで検索してみてほしい

幌については 穴さえ開いていなければ大丈夫
交換後の幌が社外品であったとしても問題ないと思う
装着のフィット感は純正品の方が上だが 生地の質感は社外品の方が上と言われているので ぱっと見で判断して問題ないだろう

駆動系に関しては 試乗でミッションに嫌な感触がなければ問題ないのだが 初めてS2000を運転した場合は感触が良いかどうかの判断ができないかもしれない
というのも S2000のマニュアルミッションは超が付くほどのショートストロークで ギヤチェンジの際に手に歯車の感触を感じるような ちょっと形容しがたいフィーリングがあるのだ
初めてだとちょっとビックリするだろう

ただデフに関しては注意が必要

機械式LSDに交換されていることも多いし ノーマルでもデフオイルの交換がちゃんと行われてないケースもある
納車前にはミッションとデフのオイルは純正新品に交換してもらうようにした方が良いだろう
ノーマルデフなら純正オイルで ミッションも基本的に純正が良い
ただし 店がS2000に詳しくて 良いオイルをサービスしてくれたのならその方が良い

エンジンオイルは100%化学合成の良いものを
納車時に交換してもらおう

それ以外には普通に中古車を買う場合に注意する点は切りがないので省略する

S2000の最初期型で走行距離が10万キロを超えているようなものだと 今なら100〜150万ぐらいで買えてしまうので けっこう気楽に乗れると思ってしまうが 元々は16〜7年前で350万もした高級スポーツカーだということは意識しておいた方が良い
オイル類の値段や部品交換の工賃も高めだし 維持費もちょっと高め
リフレッシュとなると部品の供給が終わっているものもあり 普通のスポーティカーを維持するよりちょっと面倒かもしれないと思った
買ったままでそのままトラブルがないのが理想だが 製造年月から考えていろいろ修理や調整は必要になる
購入金額ギリギリの予算で維持するのはちょっと難しいかもしれないということは考慮しておいた方が良いだろう

温泉マーク騒動を見て

温泉マークを変更する動きがあるとか

日本人には馴染み深い温泉マークが「外国人には分かり難い」という理由で国際的に通用するタイプに変更するのだとか

理由は分からないでもないが それで良いのだろうか?

だったらそもそも外国人旅行者にとって 観光地の日本語はさっぱり分からないだろうし 日本の観光地によくある「暗黙のルール」等は理解しがたいものだろう

でも 温泉マークが分かり難いからといって旅行は楽しめないのだろうか

そりゃ誤解からくる小さなミスはあるだろう

テレビのインタビューに答えていた外国人旅行者は「温かい飲み物から湯気が出ている様子に見える」とか言っていたので 日本風のカフェだと思って入ったら温泉だった……なんて間違いはあるかもしれないが それはむしろ旅の笑えるお土産話になるようなミスで 命に関わるような重大な問題は起きそうにない

それよりも日本人に長い間馴染んできた温泉マークを外国人旅行者に分かりやすくという理由だけで変えるというのは 日本人の文化というか正体みたいなものを捨ててしまう行為に思えてしまう

これまでも 欧米人の日本人に対するイメージというのは明確なものが無さそうに思えている
海外ドラマなどで日本を舞台にしたり日本から輸入された文化が けっこうとんでもない表現をされているのを見てモヤモヤすることも多いが これって日本人の気質みたいなものが伝わってないのが原因で「日本人はこんな感じ」っていうのがイメージされてないんじゃないかと思う

日本人が作ったものは 家電や自動車に限らず 寿司とか最近ではラーメンも海外進出して評判を得ているようだが それを作った日本人はどんな気質なのかと問われて ハッキリ答えられる欧米人は少ないんじゃないかと思う

日本製の家電や自動車が世界に浸透していったのは 品質の高さや価格の安さの他に 販売ターゲットにした国の生活習慣を研究して使いやすさを追求していった結果だと聞いている

2020年の東京オリンピックを招致したときの「お・も・て・な・し」だって「相手に合わせた接待」という日本人らしい気配り(悪く言えば媚び)を表したものだろう

そう考えると外国人旅行者に合わせて温泉マークを変えるというのも 日本人らしい気配りの現れと言えなくもないのだが……

でも本当にそれでいいのか?と思ってしまう

例えば旅行に行った先で特に不満に思うこともなく トラブルが起こることもなく 全てが滞りなく進行したとしよう

旅行中は至極快適で それなりのお土産も買いそろえて無事に帰宅できたとしよう

しかしこれ……帰宅した翌日には思い出がきれいさっぱり消えてしまうんじゃないだろうか

自分の行動に迎合されつくした場所だと“新鮮な驚き”は無いだろうし 後から笑える程度の苦労話も無いのでは思い出に残らない気がする

だからわざわざ外国から遊びに来てくれた人たちに「日本の場合はこうなんだ へぇ~!」と思ってもらえる日本らしいものは残していくべきなんじゃないかと思ったのだ

アライメントの話

S2000はホイールアライメント(以下 アライメント)の変化に敏感なクルマだと思う

ホイールアライメント(Wheel Alignment、正しい読みは「ホイール・アラインメント」)は、自動車のホイールの整列具合のこと。サスペンションやステアリングのシステムを構成するそれぞれの部品が、どのような角度関係で自動車に取り付けられているかを示すものである。キャスター角・キャンバー角・キングピン傾角・トーイン&トーアウトの4つの要素からなる。

Wikipediaより

S2000の場合 操作に大きく影響するのは「キャンバー角」「トー」「キャスター角」だろう
ショップに頼む場合でも この3つを指定するのが一般的だと思う

その標準値は以下の通り
前輪
トータルトー +00度00分 許容範囲±00度10分
キャンバー角 -00度30分 許容範囲±00度30分
キャスター角 +06度00分 許容範囲±00度30分
後輪
トータルトー +00度30分 許容範囲±00度10分
キャンバー角 -01度30分 許容範囲±00度30分

トーについては ミリで指定した方が理解されやすいので タイヤ外径を仮に630mmとした場合に
後輪のトータルトー: +00度30分 ≒ 5.5mm となる
許容範囲を考えると +00度20分~+00度40分 ≒ 3.7mm~7.3mm となるが 実際の作業でミリ単位の小数点以下は調整できないと思うので 4mm~7mmと考えた方が良いだろう
さらに言えば 左右それぞれを調整するので 片側3.5mmも難しく トータルで4mmか6mmにするのが現実的だろう

トーを調整した場合の変化についてだが その話の前にキャンバー角について書いておこう

キャンバー角は標準値の範囲から言えば
前輪:0~-01度00分
後輪:-01度00分~-02度00分

前輪に対して後輪を1度寝かせた状態が良いらしい(とあるショップで聞いた話)

前輪のキャンバー角を寝かせる(ネガティブキャンバー)と ステアリングの反応が鋭くなる
後輪のキャンバー角を寝かせると コーナーリングでロールしたときの粘りが良くなる という風に覚えておいて問題ない

そうなると前輪はできるだけ寝かせた方が良いのか……という話になるのだが 普段使いで考えると-02度00分あたりが上限ではないかと思う
あまりにステアリングの反応が鋭くなると 道路のうねり程度でもステアリングを持って行かれるようになって非常に疲れる操作性になる
そしてその操作性にはトータルトーも絡んでくる
トータルトーが00度00分( 0.0mm )のままキャンバーを-01度30分ぐらい付けると 峠の下りなどではステアリングを切っただけフロントタイヤが反応してくれて楽しいが 高速道路の巡航等ではけっこう疲れる操作性になる
そこでトータルトーを-00度05分程度(トーアウト)にすることで ステアリングの切り始めがちょっとだけダルになり巡航は楽になる
トーアウトにしても コーナーリングで必要なぐらいにステアリングを切ればちゃんと反応してくれるので問題ない

後輪のキャンバー角は前述の通り 好みの前輪の角度から1度寝かせるのが良いと思う

後輪の場合 キャンバー角よりもトータルトーが操作性というか乗り味に大きく影響する

標準値のところで書いたが 後輪のトータルトーが6mmというのはかなり大きい方で これがS2000の特徴にもなっていると思う
ここら辺については ストロークが短くてロール時に変化が大きい足回りの問題をなんとか解決しようとしたものらしいが ややこしい話になるのでここでは触れないでおこう

実際の経験で言うと 私はちょっとした遊び心で後輪のトータルトーを1mmトーインにしてみたことがある

これは標準値からするとほとんどトーゼロに近いものだが クルマが変わったのかと思うぐらいに操作性が変化した

具体的にはS2000のいわゆる「オンザレール」感は失われて 交差点を曲がる程度のスピードでもリアが出ようとする
実際にはタイヤのグリップを超える程の負荷はかかってないので滑らないのだが 常にリアのトラクションを意識していないといけない状態と言ったらいいだろうか
直進でもなんだか落ち着かないので 小一時間も運転していると非常に疲れる操作性になってしまった

現在は後輪のトータルトーを4mm(≒+00度20分)に調整して S2000らしい走りを取り戻している

S2000のアライメントについてネットを検索していると 普段使いの人でアライメントに気を配っている人が少ないせいか サーキット向きの設定が目についてしまう
サーキットの場合はタイヤサイズも違うし そもそも目的が違うので値そのままを参考にするのは危険だろうと思った

結局は標準値から大きく外さずに 不満が出てきてから詳しいショップで相談に乗ってもらうのが良いと思う

キャスター角について触れていなかったが キャスター角が影響するのは主にステアリングの戻り特性
つまり コーナーを曲がりきって手を離してステアリングが自然に直進位置に戻ってくるかどうかの違いなのだが キャスター角が立っているとステアリングは戻りにくくなる
私の場合はステアリングを自分で戻す運転をしているので 実は違いが分からなかったりする
ステアリングの戻りをクルマ任せにしている人はこだわった方がいいのかもしれない

ちなみに私のS2000の設定値は以下の通り

前輪
トータルトー -00度05分(約 1mmトーアウト)
キャンバー角 -01度00分
キャスター角 +06度00分
後輪
トータルトー +00度20分(約 4mmトーイン)
キャンバー角 -02度00分

このキャンバー角で 見た目はこんな感じになる
S2000フロントビュー
真正面から見るとタイヤがいわゆる「ハの字」になっているのは分かるのだが 言われないと気づかないレベル

現在 前輪をトーアウトにしている影響でちょっとダルな反応になっているが 1mmのトーアウトならキャンバー角は2度程度にしても良さそうで そうなると後輪は3度あたりにしてバランスを取りたい

それもちょっと良いかなと考えている