TE47 スプリンタートレノ

ここ一年ぐらいだろうか、旧車ブームが異常な盛り上がりを見せ、人気不人気にかかわらず古い車の高騰が続いている

1990年代以降の車なら、整備がきちんとされていたものなら普段使いも可能かもしれないと思えるが、もっと古い年代の車となると操作性も含めて所有するのには覚悟が必要だろうと思うので、私が初めて買った車のTE47スプリンタートレノをサンプルにしてどんな感じが語ってみたい

TE47スプリンタートレノ

スプリンタートレノGT(TE47)は、1974年〜75年に販売されていたが、厳しくなった排ガス規制に適応できずに販売終了になったというモデル

生産台数はかなり少なかったと最近知った

私が購入したのは1975年式で無鉛レギュラーガソリン仕様(他に有鉛ハイオク仕様もあったらしいがほとんど流通していないのではないか)

エンジンは2T-G(1600ccDOHC)にソレックスツインで、110ps/6000rpm(グロス)というスペックだった

スピードメーターは210km/hまで刻まれているもので、水温や油温などのメーターがずらっと並んだスポーツカーらしい運転席は、座った人をその気にさせる雰囲気があった

購入時は約6万キロ走行の中古車で、現代の感覚では6万キロはまだまだ新しいという感覚だが、当時の6万キロはだいぶくたびれた雰囲気が出ていた状態

足回りは固めで、乗り心地は悪い部類に入ると思う

マフラーはノーマルだったので排気音はそれほどうるさい感じはなかったが、ソレックスキャブの吸気音は迫力があり、タイミングチェーンのカム駆動もメカニカルノイズがするので、排気音より吸気音がうるさい車という感じだった

友人知人からは家の前を通ると音で分かると言われたほど

ハンドルはロックトゥロックが3.5回転でパワーアシストはない

そのため、フロント195/70R13のタイヤでも車庫入れはキツいと感じるぐらいハンドルは重かった

また、クラッチも重いのだが、ブレーキもマスターバックが4インチ(記憶違いかもしれないが)の小さいものだったので、思いっきり踏み込まないと効かないものだった

アクセルも重いので、慣れないと普通に走るだけでも疲れる車だったと思う

エンジンは典型的な高回転型

約4000回転でキャブがセカンダリーに切り替わるのだが、それよりも下の回転数ではトルクが無くスッカスカだった

AE86を運転したことがある人はトルクが無くて低回転はスカスカだと思うかもしれないが、TE47を運転した後なら、4A-Gってトルクあるなあ……などと思えるほど

4000回転を超えるとエンジン音も勇ましくなって加速感はなかなかのものだったが、今の水準で考えたらそれほどじゃないと思う

そもそも当時は他の車が速くなかったので、相対的に速い車に分類されていただけで、絶対的な速さは今の車にはまったくかなわないだろうなと思う

サスペンションに関しては、基本構造がAE86までほとんど変わっていないと言われているので、当時としては普通のものだったと思うが、リアのリーフスプリング(板バネ)が硬いうえにリジットアクスルの駆動系と相まってよく滑る足だった

当時は家から近い場所で工業団地の造成が行われていて、夜になると交通量がまったく無い広い道路になったので、雪が降ったりするとドリフトの練習をしてたりしたが、滑り出しも素直で扱いやすかった記憶がある

燃費に関しては、田舎の通勤で1リッターあたり約6〜7キロ

プラグを良い物に換えたり、エンジンオイルをいろいろ試したりしたので8キロまで伸ばすことができたが、だいたいいつも燃費の悪さには泣かされていた

エンジンの始動も、イグニッションをONにしてからアクセルを底までゆっくりと踏んで戻し、軽く踏みながらセルを回すという儀式が必要

特に意識しないでセルを回すと、エンジンがかかるまで何度もセルを回し直す必要があった

また、苦労したのが冬場の暖気運転

エンジンが暖まるまでの間、チョークレバーを引いて回転数を1500回転ぐらいに保たなくてはならないのだが、私のはチョークを引いても回転が全然安定しないので、寒いのを我慢しながらチョークを引かずにアクセルで1500〜2000回転ぐらいを保ちながら暖気運転をしていた

今思えば、ソレックスをオーバーホールか新品交換すればだいぶ違ったのかもしれないのだが、当時はそんなお金がなかったのだから仕方がない

ミッションは当時のトヨタ車らしい、節度があって各ギヤの位置が分かりやすくて扱いやすいものだった

その当時の日産車などはシフトフィールがグンニャリしていて、ひどいものになるとニュートラルなのかギヤが入っているのか分からないものなどもあり、購入を検討している頃からトヨタにしようと決めていた

この車でヒールアンドトゥも覚えたし、トラクションの意識とか滑った後の対処とか、または燃費を稼ぐ方法なども覚えていった

なんやかやで運転の基礎を教えてくれた車だったと思う

ただ、今なら当たり前のエアコン・パワステ・パワーウィンドウなども無かったので普段使いでは困ることも多かった

これから所有しようなんて考えるとしたら、1975年製というともはやクラシックカーのレベルだと思うので、維持は相当に厳しいだろうなと思う

私が所有していた3年間でもすでに機械としての限界が近づいていた感じがしていたので、そこからさらに数十年が経過していることを考えると新たに組み立て直すぐらいの労力と経済力は必要なんじゃないかな……と思えてしまうのだ

なんだかネガティブなことばかり書いてしまったが、旧車に興味を持って乗ってみたいと思ったとしても、よほどのこだわりがない限りこの年代のは勧められないと思う

金属やプラスチック部品もこの年代のは劣化しやすいので、細かいところがボロボロになってるケースは多々あるし、替えの部品も入手困難

レストアしてコレクションしたいというなら良いと思うが、普段使いには全く勧められない

TE47のような電子制御がほとんど無い車に現役として乗れたのは、今となっては運が良かったのかもしれないが、旧車として異常な値段になっているのを見ると違和感を感じてしまう

現代の車にもうちょっと魅力があれば良いのだがと思うのは旧車に興味を持つ人たちと同じなので、車メーカーも安全装備の義務ばかり増やしている国の制度も、そろそろ意識改革が必要な時期に来てるのかもなんて思うのだった