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S2000を買うとしたら(2021年夏版)

2016年12月に「AP1を買うとしたら」という投稿をして、今でもアクセスを頂く記事になっているが、ここ数年のスポーツカーブームで価格とか人気傾向とかがだいぶ変化しているので、2021年夏版ということで更新しておきたい

何かの参考になれば幸いだと思う

以前の記事はこちら→AP1を買うとしたら

前の投稿ではAP1のみに絞った内容だったが、今回はAP2についても記載するので、まずはタイプの紹介から

S2000 AP1-100,110

AP1-100(1999年4月-2000年3月)

AP1-110(2000年4月-2001年8月)

最初期型

重量は最も軽く、操作性はピーキー

中古車市場で安いのはだいたいこの型

AP1-110からVGS(可変ステアリングシステム)を採用したタイプVが追加された

幌のウィンドウはビニールタイプ

フロントガラスの枠がシールでブラックアウトされているのはこの型のみ

S2000 AP1-120

AP1-120(2001年9月-2003年8月)

最初期型の最終型

幌のウィンドウがガラスになったのはこの型から

アンサーバックもこの型から付いた

特別仕様車ジオーレもこの型になる

S2000 AP1-130,135,200

AP1-130,135,200(2003年10月-2005年9月)

排気量2リッターのAP1としての最終型

バンパーやヘッドライト、テールランプなどの外装デザインが変更され、足回りのサブフレームの変更などもあり、操作性のピーキーさは緩和された

タイヤも17インチF215/45 R245/40となった

ここからはAP2(エンジンが2.2リッターのF22Cに変更されたもの)

S2000 AP2

AP2(2005-2009年)

エンジンが2.2リッターのF22Cとなり、許容回転数もF20Cの8,900rpmから8,000rpmとなった

スロットルがバイワイヤとなり、横滑り防止装置が付いた

ボディや足回りの構造はAP1-130以降と同じ

タイプVも継続

S2000 AP2 TypeS

AP2 TypeS(2007-2009年)

AP2のボディに新設計のエアロパーツを装着し、ダンパー&スプリング、シートなどTypeS専用の装備となったモデル

車両の画像は全てグーネットからの転載(グーネットカタログS2000

以上が販売されたモデルの一覧だが、中古車の価格は年代が新しくなるほど高く、走行距離が少ないものに付加価値が付くという、中古車としては普通の動きをしていると思う

ただ、相場となると、私がAP1-110を購入した2015年頃に比べて1.8〜2倍ぐらいの値段になってしまっている

ではどのモデルから探すのが良いか?ということになるが、普通なら予算に合わせて……というのが通用しにくい

タマ数が少ない上に最近のスポーツカー高騰の影響も大きいので、それぞれのタイプを知った上で候補を探し、候補の値段に合わせて予算を用意するという方法がいいのではないかと考える

タイプで異なる部分について

AP1-100,110の最初期型の場合、ノーマル状態での運用にこだわる場合はメリットが少ない

エンジンはより新しいAP1-120や130以降とほとんど変わらないし、足回りは設計が古いせいでノーマルダンパー・スタビではピーキーな操作性になる

ノーマル運用でS2000を楽しむなら、AP1-120,130以降かAP2を勧めたい

しかし、チューニングベースとして考えた場合、AP1-100,110はメリットが多くなる

まずAP1-100は中古のタマ数も多いので入手しやすく価格も安め

また、S2000をチューニングして乗るという場合、いずれ必要になるのがECUチューンなのだが、AP1-100,110対応のチューニングECUは比較的手に入れやすい(ECUの中古品は品薄なので難しいが)

AP1-120以降はセキュリティの関係もあるようで、ECUチューンの情報を私は見つけられなかった

AP2の場合はECU交換ではなく書き換えを行えるので、ECUチューンのハードルは低い

足回りに関しては、適切な車高調やダンパースプリングセットを利用すれば、危険とまで言われるピーキーさは緩和され、操作性も乗り心地も良くなる

最初から車高調が付いている場合は、ちゃんとしたメーカーならばオーバーホールが可能なので、銘柄・型式を確認することを強く勧める(一部、オーバーホールできない型もあるので要確認)

ノーマル志向の場合はTypeS用のダンパー・スプリングの検討も勧めたい

車高が10mmほど下がる上に特性も違うとか(伝聞だけで未確認)

足回りに関しては、関連する項目が多岐にわたるので中古車の程度判断は難しく、整備記録で確認出来ればベストだが、スポーツカーの扱いに慣れた店ならば詳しく教えてくれる……かもしれない

S2000購入経験のある人が次の購入候補として考えるのがAP1-120型

初期型の良いところを残しつつ、ガラス幌とかアンサーバックとかの改善点があり、ある意味完成型とも思えるからなのだが、問題はとにかくタマ数が少ないこと

そのため価格も高くなっているので、購入には覚悟が必要かもしれない

※個人的にはAP1-120のそこそこ良い個体があったらほしいと思っているが……

AP1後期(AP1-130,135,200)の場合は、サスペンションを支えるサブフレームの構造と強度が改善され、初期型で見られた危険な挙動は緩和された

そのため中古としても高価になっており、程度の良い個体も多いように思える

ただ、年数はかなり経っているので見た目よりくたびれている可能性はある

走行距離よりもメンテナンスがきちんと行われていたかを確認できることが望ましい

購入後はリフレッシュが必要な部分だけを交換していけば維持できそうではあるが、販売価格を考えると慎重に選びたくなる

チューニングについては、基本的にAP1-100,110と変わらないのだが、前述したとおりECUチューンに関しては情報を見つけられなかった

カリカリにいじって遊びたいという場合にはAP1-100,110の方を勧めたい

AP2の場合、AP1のような9,000回転まで回る!2000ccで250ps!とかのコマーシャルな部分は無いが、実質的な速さはAP2の方に軍配が上がるようだ

トルクが低回転から立ち上がるので運転はしやすいだろうし、カタログ値と実馬力の差があまりなく、堅実な速さを手に入れられるイメージがある

ECUチューンに関しては、前述したとおり設定値の書き換えが可能なので、わりと簡単に変化を楽しめるようだ

また、最終型のTypeSの空力はS2000の弱点を全てカバーしているということで個人的には一度所有してみたいと思っているのだが、問題はその値段

ちなみにAP1-130以降のバンパーならばTypeS用のフロントスポイラーを付けられるし、リアウィングはトランクごと交換することで全車が装着可能(補強しないで取り付けるとヘコむらしい)

TypeSが高すぎて買えないということであれば、エアロパーツだけを装着して見た目だけTypeSは可能だということは覚えておいていいだろう

足回りのチューニングはAP1初期型でもAP1後期やAP2でもそれほど変わらないので、どんな走り方をしたいかの目標を決めて、あとは好みで候補を絞っていくのがいいかと思う

ボディ周りの注意点

ボディ周りについては、AP1初期型を選ぶのであれば固有の注意点として、フロントアッパーアームブラケットの溶接剥がれが無いかは確認しておきたいところ(これはAP1-100,110,120が該当)

JUN フロントアッパーアームブラケットブレース
私のS2000のアッパーアームブラケット補強例

予防的に補強処理をする場合もあるので、補強がされていたとしてもネガティブ要素とはならない

ボディ周りに関しては、フェンダーの爪折りをしてあるものは要注意

いずれサーキットでタイムアタックしたいとかの場合はむしろメリットかもしれないが、爪折り後の処理が悪いとサビや変形の原因になるので、中古車としては避けたいところ

幌の注意点

幌に関しては張りがあって穴やひどいスレがなければ問題ない

AP1-100,110の場合でウィンドウがガラスの幌になっていたら1回は交換されている証拠となる

熱線のスイッチ
その場合、純正品のレトロフィットキットを使用したかどうかは、センターコンソールに熱線のスイッチが付いているかどうかで判断できる
※コンバーチブル研究所からの転載(S2000前期

幌は必ず開けて動作を確認しよう

引っかかりがあったり、畳みきれないで浮かんでる場合はどこかに不具合を抱えている可能性があり、修理ができない場合は全交換となる

走行中に幌の前部分から風切り音がする場合は、留め金具の緩みを調整すれば直ることがあるので、確認するといい(走行中に助手席の人に幌の前部分をフロントガラス側に押しつけてもらって音が消えれば、留め金具:ストライカーの緩みである可能性が高い)

あとは、トランクにある工具スペースを取り外して、その下にある内装部分に湿り気や水跡がないかを確認。

幌の取り付けが悪かったりメンテナンスが悪いと水漏れが起こり、ここに溜まるケースが多いからだ

※ここで言うメンテナンスとは、幌のレインレールからつながる排水路にゴミが詰まると排水がうまくいかずにトランクに流れてしまうので、そういったゴミを掃除することを言う

その他、ボディ周りや幌の注意点は、以前の投稿記事でも紹介しているのでそちらも読んでみてほしい

以前の記事はこちら→AP1を買うとしたら

タイヤとホイール

タイヤとホイールに関しては、サイズとタイプに注意

サイズは16インチならF205/55 R225/50 17インチならF215/45 R245/40というのがノーマルサイズだが、オフセットによってはF255/40 17も入る

フロントを255にしている場合は爪折りが必要だったり、アッパーアームブラケットにダメージがあったりするので、ノーマル志向の場合は避けたほうがいいかもしれない

また、ツライチにこだわる場合も、4〜5年前に測定方法が変わっているので、昔は大丈夫だったが今はダメというのもあるので注意が必要だ

タイヤのタイプはいわゆるプレミアムスポーツ以上のものを履いてる方が安心できる

もちろんハイグリップタイヤもいい

S2000はグリップが不足すると楽しんで走れない車なので、新品タイヤをサービスしてくれるという場合はタイヤのタイプに注意しよう

エンジン周り

エンジン周りでは、社外エアクリーナーに換えてある場合もあると思うが、その場合は無限やJ’sRacingのものならいいが、それ以外の場合はよく調べて気に入らない場合、ノーマル戻しも交渉してみた方がいい

ラジエーターはノーマルのもので無交換だと、そろそろ漏れが発生する時期にさしかかっているので、普通なら敬遠されがちなアルミラジエータに換えてあるものはむしろ歓迎できると思う

エンジンオイルは100%化学合成のものが標準と考えていいので、廉価オイルのシールが貼ってある場合は要注意

純正ならウルトラGOLD SN 5W40を基準として、同等以上のオイルを使用していることが望ましいと思う

駆動系

ミッションはオイル管理の履歴があればベストだが、それはあまり期待できないので、購入時に純正オイルに入れ替えてもらうか、購入後に好みのオイルに入れ替えるのを勧める

同様にデフもオイルの交換はした方がいいのだが、機械式LSDに換えてあるかどうかは確実に確認しておきたいところ

ノーマルデフと機械式LSDは操作性とオイル等のメンテ方法が異なるので、知っておかないといけない部分だと考えるからだ

クラッチはほとんどの部品が交換可能な構造となっているので、感触が悪い場合は全交換しないと直らないことがある

クラッチの交換が必要な場合、軽量フライホイールやステンメッシュクラッチラインへの交換を考えているならこのタイミングがベストで、後からフライホイールだけをやると高くつくということは覚えておこう

駆動系の重要部品のドライブシャフトやプロペラシャフトは、多少のガタつきがあっても即不具合とはなりにくいし、よほど慣れてる人じゃないと音に気づきにくい

中古車探しのチェックポイントとしてはあまり意識しなくていいと思う

それから、重要なチェックポイントとして……というよりは古い車を購入する際の重要ポイントとして、ハブベアリングのガタや異音が出ていないかは確認しておきたい

最悪の場合はハブごとすっぽ抜けて大事故になる可能性もある部品だけに、リフトアップしてガタがないかぐらいは確認したいところだ

ブレーキ周り

ブレーキはディスクがレコード盤になっていないかを確認

パッドの交換だけなら安いが、ディスクも交換となるとなかなかの出費となる

また、店頭に並ぶ状態では考えにくいことだが、ブレーキを引きずる症状が出ているとキャリパーのオーバーホールまたは交換が必要だ

ブレーキ自体はノーマルで性能的には問題ないので、試乗で気になるところがなければ大丈夫だと思う

シートや内装

ノーマルシートはスポーツ走行するなら交換することが前提になる……と言いたいぐらいホールド性が悪いので、レカロやブリッドが付いているならむしろ歓迎したいぐらいだが、シートレールがレカロあるいはブリッドの純正品かどうかは注意が必要

純正品でない場合は強度証明書があるかどうかを確認したい

内装については、フロアマットがちゃんとしてるか、ダッシュボードに大きな傷や割れがないかを確認

特にダッシュボードは交換となるとダッシュボードを全部外すことになって工賃が高いので、交換したくなるほどのダメージがあるものは避けたいところ

また、純正ナビは使い物にならないと思うので、いずれ外すことになると思うが、純正ナビの取り付け穴を利用して社外ナビを付けるといったことをやっているショップがいくつかあるので、ナビ付きの方が後々の出費を抑えられるかもしれない

※新品のダッシュボードに取り換えて社外ナビを取り付けてくれるショップもある

それからETCのカードリーダーの取付位置には注意

ステアリングコラム横のドライバーの左膝上に付けている場合があり、シートを交換した場合などに膝に当たるという場合がある

センターコンソールのグローブボックス内に仕込むのがスマートなので、移設できないか相談してみるといいかもしれない

ハードトップについて

S2000をオープンスポーツではなくスポーツカーとして購入しようとしてる場合、ハードトップが付いている個体を優先する場合があると思う(購入前の私がそうだった)

ただ、ハードトップは購入してから知ることになるオープンで走ることの気持ちよさを得るには、ひたすら邪魔になるということだけは知っておいてもらいたい

車体にハードトップを収納できるわけではないので、自宅に置いておくことになるし、取り外しには最低2人の人手が必要

しかも慣れてないとハードトップに付いている取付金具でボディにガリ傷……なんてこともあるようだ

ただハードトップは純正でも無限製でも20万円以上で売れるので、邪魔になったら売り払うというのも有りだとは思う

むしろ、あとから取り付けたい場合はそれなりの出費を覚悟する必要がある

純正品は新品がもう手に入らないので中古を探すことになるし、無限製のはFRP製とドライカーボン製では値段が倍ぐらい違うので要確認

幌車というのは頼りないイメージを持ってしまうが、S2000の幌はかなり丈夫で露天駐車でも簡単には痛まないということだけは考慮してほしい

エアロパーツについて

S2000という車は、見た目に反して空力はかなり悪い部類に入ると思う

横風に弱いし、高速道路での巡行中でも常識的な速度域でさえ浮いてるような不安を感じることがある

AP1-100,110,120ならばフロントにモデューロスポイラーが付いていればフロントが浮くような感覚は改善されるし、リアスポイラーなども効果があるので、実用性から言っても派手すぎないエアロパーツはあった方がいいと思う

GTウィングも私は肯定派だが、問題はそのサイズ

中古車市場では車検に通らない1600mm幅のを付けている個体があったりするので注意が必要だ(車検に通るのは翼端板を含めて1420mm以下)

AP1-130以降のフロントバンパーに無限のスポイラー(フロントウィング)が付いている場合は下側に擦り傷があるか確認したくなるが、これは傷があるのが普通というぐらい擦りやすいので、気にしない方がいいかもしれない(割れがある場合は取り外すことも考えた方がいい)

まとめてみる

S2000の中古車を購入する場合、年数が古いこともあって手厚い保証などは期待できない

ノーマル志向だとしても購入後に手を入れたくなる部分が多い車なので購入予算ギリギリでの維持は厳しい車だと思う

それでもきちんと整備された状態のS2000は本当に素晴らしい車なので、余計な出費や不安感を持ったりしないよう、事前の知識はあった方がいいと思うのだ

この投稿が佳きS2000ライフにつながってくれることを祈る